鹿児島県医療法人協会会報 vol.54・55合併号
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142(弁護士) 松本晴樹(厚生労働省医政局医療安全推進・医務指導室室長)〔以下、「室長」〕 井上清成(弁護士)〔以下、「弁護士」〕 小田原良治(鹿児島県医療法人協会会長)〔以下、「会長」〕近年、国立国際医療研究センター病院での医療事故報告、愛知県愛西市の新型コロナワクチン接種事故報告書公表・記者会見問題、北海道岩見沢市立総合病院の医療事故公表・警察届出問題等、医療事故調査制度の不適切な対応が相次いでいる。これらの誤った対応の原因に医療安全調査機構の不適切な研修・発言等があると思われることから、これらの誤解を払拭すべきであると考えた。したがって、医療事故調査制度創設時に立ち返って、再度、医療事故調査制度の意図するところを確認するために、今回の企画を行ったものである。鼎談の演者は、厚生労働省医政局医療安全推進・医務指導室室長の松本晴樹氏、日本医療法人協会顧問で弁護士の井上清成氏と日本医療法人協会医療安全部会長で当協会会長の小田原の3名である。私は、本制度創設時、省令・通知を作成するために設置された「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の構成員をつとめており、井上清成弁護士は、私と二人三脚で制度を適切なものにするために奔走していた当事者である。医療事故調査制度の歴史的経緯を知る二人と、現在の厚労省担当室長との意見交換を行うことにより、近年みられている医療事故調査制度への不適切な対応に対して警鐘を鳴らすことを目的とした。演者3人、お互い事前に、発言についてのすり合わせを行った上で、鼎談という形で、医療事故調査制度の現在起こっている問題点の回答を提示する形をとったものである。鼎談の内容を理解いただき、くれぐれも医療事故調査制度が、そもそも想定していないような、不適切な対応を取られないことを期待している。鼎談の全文は以下の通りであり、講演当時使用したスライドも参考のために掲載することとした。1(弁護士)私は、このセッションの司会を務めさせていただく弁護士の井上清成です。これより、「創設時に立ち返って医療事故調査制度を考える」を始めさせていただきます。本日の出席者は、厚生労働省医政局医療安全推進・医務指導室室長で医師の松本晴樹先生です。次は、鹿児島県医療法人協会会長で医師の小田原良治先生です。よろしくお願い申し上げます。「医療事故調査制度」は、医療法に定められた法令上の制度です。ところが、医療者の医療的な感覚からすると、その医療法については、必ずしも感覚が素直にフィットしないところがある医療者もいるらしいのです。そのため、平成26年(2014年)6月の制度成立から10年も経過しているにもかかわらず、未だに医療事故調査制度に対して誤解している医療者が残っています。問題なのは、その誤りを他の医療者に植え付けられてしまうことです。そこで、ここでは、誤った医療者的な理解を払拭させるべく、創設時に立ち返って医療事故調査制度を考えて参ります。まずは、「医療事故」と「医療過誤」について、小田原先生、この点はいかがでしょうか。3(会長)はい、まずは一例を申しますと、誤った医療者的な感覚からすると、患者さんやご遺族の素直な責任追及の感情を、短※        ※講演報告4鼎談「創設時に立ち返って医療事故調査制度を考える」会長小田原 良治医療機関に院内医療事故調査報告書を公表する義務はない

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