鹿児島県医療法人協会会報 vol.54・55合併号
17/24

1720(会長)おっしゃるとおりです。2つの要件を「かつ」で結んだのが、現行の法令です。2つの要件が「または」になっているのとは、大違いです。もしも「または」だとしますと、「予期していた死亡」かつ「医療起因性のある死亡」も「制度の対象事案」に含まれてしまいます。さらに、「予期しなかった死亡」かつ「医療起因性のない死亡」も「制度の対象事案」に含まれることになります。この重要なポイントは、医療事故調査制度の制定当時に、当時の塩崎恭久厚生労働大臣が適切に答弁をなさっておられました。よく「医療事故」の報告件数が少ないなどという反発の声も聞きますが、その反発は、「医療事故の範囲」の誤解に基づくものかも知れません。21(弁護士)松本室長、いかがでしょうか。22(室長)確かに平成28年当時、塩崎厚労大臣が「医療事故調査制度における医療事故の定義は『医療に起因する死亡』および『予期しなかった死亡』の両者を満たす場合であるため、(当初件数を予想したときよりも)対象が狭くなっている」という趣旨の発言を記者会見でしていたと認識しています。23(弁護士)松本室長、ありがとうございます。さて、「過誤の有無は問わない」という用語についても、誤って使われることがあるようですが、小田原先生、その点はいかがでしょうか。24(会長)もともと厚生労働省が「医療事故の定義について○基本的な考え方」のうちの「医療事故の範囲」を明示した際に、「予期しなかった死亡」と「医療起因性のある死亡」の欄から「制度の対象事案」を示す欄の外側の注書きに「※過誤の有無は問わない」と明記したことに由来する用語です。本来の意味は、「医療過誤の有無は問わず、医療事故の有無は独立に定められている」ということです。「医療過誤」かどうかと「医療事故」かどうかは、全く個々別々に決められることなのです。したがって、医療事故であっても医療過誤ではないケースがあるのと同様、医療過誤であっても医療事故ではないケースもありうるのです。先般の設問の(3)の正しい解答のとおりです。25(弁護士)松本室長、いかがでしょうか。26(室長)医療事故調査制度の対象となる医療事故の範囲は法令で定義しているところであり、当省ホームページにあります「医療事故調査制度に関するQ&A」のQ2の回答にもお示ししているとおり、「過誤の有無は問わない」とありますので、適切に理解して運用していただきたく思っております。27(弁護士)さらに、「予期」と「予見」とが混同されて使われているケースもあると聞きますが、小田原先生、いかがでしょうか。図2医療機関に院内医療事故調査報告書を公表する義務はない

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る