鹿児島県医療法人協会会報 vol.54・55合併号
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2巻頭言2008年厚労省第3次試案・大綱案がだされた年に、私は、日本医療法人協会「死因究明制度等検討委員会」委員に就任した。2012年、日本医療法人協会医療安全調査部会長に就任したことから、医療事故調査制度創設に深く関わることとなった。2014年11月、厚労省「医療事故調査制度の施行に係る検討会」構成員に就任、2015年3月20日に「医療事故調査制度の施行に係る検討会」とりまとめが行われ、厚労省令第100号、医政局長通知がだされて、医療事故調査制度が創設された。医療事故調査制度は、同年10月1日に施行、2016年6月24日には制度見直しが行われた。医療事故調査制度は、複雑な歴史的経緯を経ていることから、理解が難しいと考えられている。確かに、旧来の考えに固執している人ほど理解が難しいようである。しかし、先入観なしに素直に考えると、非常にわかりやすく良い制度である。永年にわたり国中央で制度創設に関わって来た関係上、地元鹿児島での制度定着が重要と考えたことから、当協会会長をお引き受けした。このように、就任の最大目標は、医療事故調査制度、併せて医師法第21条「異状死体等の届出義務」の理解の普及であった。当初、2期4年を目標に、積極的に活動を行ってきた。ところが、既に、出来上がって確立したはずの医療事故調査制度そのものが、運営主体の日本医療安全調査機構の不適切な対応のために、なかなか定着しない。加えて、解決したはずの医師法第21条について、2019年2月8日、「医師による異状死体の届出の徹底について」という不用意な通知がだされたことにより、混乱が生じることとなった。対応に追われたが、2019年4月24日、厚労省医政局医事課事務連絡までたどり着き、「平成31年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル追補」がだされたことによって、異状死体の判断は外表異状によることが再確認された。何とか、解決までこぎ着けることができたのである。「雨降って地固まる」。運動の成果で、医師法第21条の解釈はより強固なものとなった。これら、中央部の激変に対応せざるを得なかったことに加え、新型コロナ流行もあり、未だに医療事故調査制度への対応に追われているのが現状である。しかし、この間、医療事故調査等支援団体である当協会に相談があり受理された件数は、令和2年度2件、令和3年度2件、令和4年度2件、令和5年度3件と鹿児島県の医療事故調査制度案件の大半を占めている。会員医療機関に確実に貢献できていると自負している。講演会等も医療事故調査制度関連を中心に有力な講師を招聘しており、他団体では行えない活動を行ってきている。医療事故調査制度創設10年になろうとする今、国立国際医療研究センター病院の医療事故報道、愛知県愛西市の新型コロナワクチン接種事故報道、北海道岩見沢市立総合病院医療事故報道等、医療事故調査制度をめぐる問題が相次ぎ、医療事故調査制度が本来の趣旨と異なる方向へ引きずられる危険が高まってきた。鹿児島県医療法人協会は、これらの不適切な動きを修正し、専ら医療安全の制度である医療事故調査制度の本来の趣旨を再確認するために、厚労省担当者との鼎談、制度創設当時の担当政務官であった橋本岳衆議院議員の講演等を通じて、創設当初の医療事故調査制度の趣旨の確認を行ってきた。このような経緯で、はからずも、今般、引き続き、第4期目を担当させていただくことになった。医療事故調査制度が一刻も早く安定・定着し、結果的に、当協会の果たす役割が減少することを祈っているが、それまでの間、今期も医療提供者の立場に立って、他団体が行えない役割を果たしていければと考えている。限られた予算で厳しい運営を迫られているなか、役職員一同、会員病院のお役に立てるよう努めていきたいと思っている。引き続き当会の運営にご協力をお願いし、第4期目会長就任のごあいさつと巻頭言に代えさせていただきたい。会長小田原 良治4期目をお引き受けして~専ら医療安全の制度である医療事故調査制度の趣旨の再確認を~

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