鹿児島県医療法人協会会報 vol.54・55合併号
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51.はじめに現在、大きな時代の転換点を迎えています。経済財政運営と改革の基本方針2024(以下「骨太の方針2024」という)においては、「豊かさを実感できる所得増加を実現し、来年以降に物価上昇を上回る賃上げを定着させる。このため、賃上げ支援を強力に推進するとともに、医療・福祉分野等における賃上げを着実に実施する。」とあり、最低賃金については、「2030年代半ばまでに全国加重平均を1,500円となることを目指すとした目標について、より早く達成ができるよう、労働生産性の引上げに向けて、自動化・省力化投資の支援、事業承継やM&Aの環境整備に取り組む。」とあります。そこで、この時代の転換点のひとつの乗り越え方について、考察したいと思います。2.三位一体の労働市場改革骨太の方針2024には、「賃上げを持続的・構造的なものとするため、三位一体の労働市場改革を推進する。」として、「リ・スキリングによる能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入」、「成長分野への労働移動の円滑化」などへの言及があります。つまり、医療・福祉分野が成長分野でない(又は魅力的な働き口でない)のなら、労働移動等により、恒常的労働力不足に陥る恐れがあると考えられます。3.茹でガエル現状維持バイアスや課題の後回し、緩い変化には対応しづらいことなどにより、ゆっくりと進行していく危機については管理が後手後手となり、気がつけば手遅れとなる恐れがあります。募集しても人が集まらない、優秀な人材がそっと退職していく。そんな事態に陥ってはいないでしょうか。4.エンゲージメント�仕事への熱意度一般社団法人日本経済団体連合会の週刊経団連タイムス2023年2月23日 No.3580の、「エンゲージメントと労働生産性を高める働き方改革」の図(図1)の分子には、エンゲージメントの向上への言及があり、その指標についてはeNPS(従業員ネット・プロモーター・スコア)が有名です(eNPSとは、現在の職場を、家族や親しい友人にどの程度おすすめしたいか、お勧めする可能性を10点満点で答えてもらい、9点と10点の割合から、0点から6点の割合を引いた数値のことです)。また、新居佳英氏(㈱アトラエ代表取締役)及び松林博文氏(グロービス経営大学院講師)は、共著「組織の未来はエンゲージメントで決まる」(英治出版2018)において、エンゲージメントを左右する9つのキードライバーとして、「職務」、「自己成長」、「健康」、就任の挨拶/勤務環境改善は経営上の喫緊の課題特別寄稿(図1 エンゲージメントと労働生産性を高める働き方改革)(公社)日本医業経営コンサルタント協会 鹿児島県支部 副支部長国立人事 代表 新屋 尋崇勤務環境改善は経営上の喫緊の課題

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