鹿児島県医療法人協会会報 vol.54・55合併号
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6「支援」、「人間関係」、「承認」、「理念戦略」、「組織風土」、「環境」を挙げられており、これは、医療勤務環境改善マネジメントシステム(以下「MS」という)における4つの領域(働き方・休み方改善、職員の健康支援、働きやすさ確保のための環境整備、働きがいの向上)に通じるものがあります。なお、図の分子(エンゲージメントの向上)をハーズバーグの二要因理論における動機付け要因、分母(インプット(労働投入)の効率化)を同理論の衛生要因とみる見方もあります。5.医療勤務環境改善マネジメントシステム(MS)�魅力的な職場をつくる処方箋MSの詳しい説明は、以前寄稿いたしました県医師会報(令和3年7月号)をご覧ください(なお、いきいき働く医療機関サポートWeb(以下「いきサポ」という)からは、MS導入の手引き、支援ツール等がダウンロードできます)。いくつかポイントがありますが、私がポイントであると考える点について、以下言及いたします。 (1)トップによる方針表明貴法人は、組織として構造的に「茹でガエル」の状態になっていませんでしょうか。ゆっくりと進行していく危機については、トップが「やる」と決断し、周知徹底する必要があります。 (2)体制整備働き方改革推進チームを多職種で構成し、定期的開催を機械的にスケジューリングする必要があります。そうしなければ、絵に描いた餅になりかねません。 (3)ミッション/ビジョンの確認実のところ、これが最重要ポイントであると考えます。なぜなら、急激に変化し、いままでの経験が通用しない、解釈が多義的になるような環境で求められるのは、「現状はどうなっているのか(いま何が起きているのか)」「我々は何をすべきか」についておおまかな方向性を示し、それに意味を与え、納得してもらい、足並みを揃えることだからです。したがって、まずは「あるべき姿」、一歩進んで「ありたい姿」、これをしっかり踏まえます(その後、次のステップとして、バックキャスティングによりフェーズ1(目標)をつくります)。なお、業績を上げるチームの5つの因子(Google社のプロジェクト・アリストテレス)は、①心理的安全性、②頼れる仲間、③明確な目標、④個人的に意味のある仕事、⑤その仕事に影響力があるという信念、の5つですが、③④⑤を充実させるうえでもミッション/ビジョンの確認は欠かせません。 (4)現状分析現状分析では、院内業務の見える化等をします。その際、プロセスマッピング(業務フローを図により可視化。マニュアルにもなる)、ヒアリング(どの業務の、どのような点が、うまくいっていないのか。方策案は)、アンケート(傾向をつかむ。選択式→定量的。自由記述欄→定性的)、タイムスタディ(どの時間帯に、どのくらい時間をかけ、どのような業務を行っているか)などで、主観的な意見と、客観的なデータとを組み合わせて、現状を把握します。課題の抽出については、最終的に成し遂げたいこと(理想)は何か、現状でできていないこと、不足していること、阻害要因は何か、課題(問題)真因の言語化をします。その際、ムリ・ムラ・ムダ等にも着目し、「なぜ?」を繰り返してみます(「新QC7つ道具」等も役立ちます)。 (5)目標設定・計画策定(ミッション/ビジョンからバックキャストされた)目標は、例えば「〇〇(方策)によって、●●(課題)に要する時間を削減することで、■■(時期)までに、△△(指標)が、▲▲以上減少する。」等のように具体的に設定します。なお、取組の方向性・方策の検討においては、例えば業務改善であれば、非効率な方法・手順や他職種等実施可能なこと、業務負担の偏り等をターゲットに、排除(廃止・削減)、交換(再配置・標準化)、結合・分離(一元化・分業化)、簡素化(機械化・IT化)、時間・空間の工夫(なくす・ずらす・長(短)く・広(狭)くする)などを駆使します(但し、ケアの質の担保(専門性・倫理・医療安全・法律・制度・働きがい等)は大前提です)。取組手順(誰が、いつまでに、何を)としては、①スケジュール(時期・期間)、②体制・連携・協働(コラボ)、③道のり(試験的・アジャイル・ウーダループ)、④合意形成・経費、⑤目標(値)設定、⑥PDCA、を意識します。 (6)取組の実施・評価・改善随時記録、進捗の共有、意見交換(振り返り)、目標(値)達成の可否・程度、達成要因、障害となった要因、取組

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