鹿児島県医療法人協会会報 56号
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↓↓↓↓10【まとめ】ISO5665は、消費者事故が起きた際に、再発防止に資するしっかりとした事故調査を各国で実施できることを願って作った国際標準です。日本でも、民間企業、行政機関、地方自治体、またはそれらが設置する第三者委員会など、消費者事故調査を行う主体が共通して利用できる初めての規格です。この規格を利用することで、再発防止のための事故調査が、これまでよりも迅速かつ効果的な内容で実施され得ることが見込まれ、事故防止に大きく寄与することが期待できます。そして、私たち消費者に提供される製品やサービスへの信頼を高めることができ、事故対応のために企業が被る経済的・社会的損失のリスクを低減することができます。今後、ISO5665に基づいた事故調査を実施することによって、より安全な製品・サービス・施設を提供でき、同時に、消費者の安全、ひいては社会の安全の向上に寄与できます。当然ですが、このISO5665は運輸事故調査にも、医療事故調にも転用が可能です。再発防止を目的とした事故調査手法はどの分野でも共通で、その標準化は世界的に必要なため、ISO5665として創設しました。医療事故調は特殊でISO5665に馴染まないと強調するのであれば、それは再発防止を目的としない邪な理由を目論んでいること以外の何ものでもありません。なお、ISOは著作権管理が非常に厳しいため、ISO5665の詳細を本稿で解説することを割愛します。ISO5665は、オンラインで購入できます(税込み29,067円、151スイスフラン)。紙版は送料が必要です。電子版がおすすめです。「成文」の閲覧は東京都田町駅近くの日本規格協会(https://webdesk.jsa.or.jp/)1階のストアでは可能かもしれません。ISOは高額で、恐縮です。ヒューマン・エラーを特定個人に責任を転嫁して調査を終了民事・刑事責任、行政罰現在の医療事故調の目的はただ1つだけである。「医療安全」だけである。「責任追及」「処分・処罰」「報復」「救済補償」などは目的ではない。非難と恥に依存するアプローチを医療事故調に持ち込むことを避けるべきである。表出している医療事故調の問題は、歪んだ期待にまみれた事故調査委員に端を発している。すべての医療従事者は、自身の技能向上に真摯に向き合っている。あらゆる領域の医療指導者は、学習医療システムの理念と文化を習得・採用し、継続的な学習を目指している。幸い、医療事故調に真摯に向き合っている有能な人材も少しずつ増えている(https://www.jpscs.org/)。「責任追及」「処分・処罰」「報復」「救済補償」に関わる者を排除した「正しい制度利用」が今後は浸透することを、患者になりうる一国民として、切に願う。であるならば、歪んだ期待にまみれた事故調査委員を退場させることが、医療安全上最初に講ずべき措置である。この度創設したISO5665もその一助になると自負している。【謝辞】ISO5665には、「被害者と被害者家族への敬意」についての規定を盛り込みました。ともすれば処罰感情に引きずられてしまう被害者およびその家族への敬意を払うことで、調査プロセスにおける疎外感を感じさせないために、情報と説明が提供されるべきと考えました。日本の医療事故調でも、患者および家族への説明は、事故調査と並行して重要なプロセスであることを謳っています。消費者事故に関わった様々な有志者と共に活動し、また航空業界の先進的な事故調査の考え方を学んだことがここに反映できました。関係各位に厚く御礼申し上げます。ヒューマン・エラーを特定複合的な要因を調査個人の責任を問わず、システムを修正不適切な事故調査ISO 5665を導入した事故調査

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