鹿児島県医療法人協会会報 56号
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17カスハラ対応について・基本方針・基本姿勢、従業員の対応の在り方を従業員に周知・啓発し、教育する。→基本方針を店内にポスターとして貼り出し、顧客へ周知することも有効!」「◎カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応○事実関係の正確な認識と事案への対応 ・顧客、従業員等からの情報を基に、その行為が事実であるかを確かな証拠・証言に基づいて確認する。 ・過失がある場合は謝罪し、交換・返金に応じる。ない場合は要求等に応じない。○従業員(被害者)への配慮の措置 ・被害を受けた従業員に対する配慮の措置(組織的な対応やメンタル不調への対応等)を適正に行う。○再発防止のための取組 ・定期的な取組の見直しや改善を行い、継続的に取組を行う。」2 カスハラとクレームはほぼ共通カスハラの定義は、通常、「患者・家族等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、医療機関職員の就業環境が害されるもの」とされている(具体例などについては、後述。)。定義等から明らかなとおり、つまり、カスハラと逸脱した患者家族クレームとは、ほぼ同様と言ってよい。ところで、カスタマーハラスメントは、以前からパワハラ・セクハラ・マタハラと言った「ハラスメント」と同様には位置付けられて来ず、そのため立法化は見送られて来た。なぜなら、かつては、患者・家族のクレームは医療機関の内からではなく外からなので、ハラスメントとしては分類されていなかったからである。しかし、被害者重視で被害者目線のハラスメントにおいては、セクハラやパワハラと異なるところはない。そこで、徐々に、ハラスメントとしても分類可能(カスタマーハラスメント)であると考えられるようになって来ている。そこで、立法化されれば、より強力にクレーム対応が可能となるであろう。3 カスハラ対策とクレーム対策の違いもともとクレーム対策の基本は、「目標は医療機関自体を守ること」であった。これに対して、カスハラ対策の基本は、(「医療機関自体を守ること」に加えて、)「目標は、医療機関職員を守ること」にある。ここが大きな違いだと言ってよい。昔から言われていることであるが、クレーム対策の基本は、「まず最初に、患者・家族のクレームの対象が『患者・家族への実損があったか?』『医療機関側に過失(過誤)・非違行為があったか?』どうかを、想定すること(推認すること)が肝要である。最初から、『成り行きを注視』は不適切な対応であるし、また、『とりあえず謝る』は最悪な対応であろう。」というものである。このように先読みして対策を立てることが、ポイントなのだと言ってよい。ところが、カスハラ対策の基本は、「パワハラ(疑いも含む)対策と同様に、『プロセスを踏む』ことである。結果を先取りして、仲直り・和解・処分・解雇など、『中抜き』での『決着』を性急に求めがちであるが、被害者側が開き直ったら『パワハラ隠し』として医療機関自体も責任者とされてしまい沈没または炎上しかねない。(カスハラとして立法化された後は、この点に十分な配慮が必要となろう。)」というものである。よく「パワハラ隠し」などの用語でマスコミに取り上げられることもあるが、それらは法技術的には「プロセスを踏んでいないこと」「中抜きでの決着をしようとしていたこと」が暴かれていることがほとんどと言えるように思う。

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