2巻頭言2015年3月20日、医療事故調査制度の施行に係る検討会とりまとめが出され、5月8日には省令・通知が出された。同年10月1日には医療事故調査制度が施行された。今年で丁度10年になる。時々「医療事故にどう対応するか」という内容の講演会の案内が届くが、講演概要を見ると医療事故調査制度を理解していないのではないかと思われるものがある。医療事故調査制度を紛争解決の制度と誤解しているらしい。『医療事故』と『医療過誤』を混同しているのであろう。『医療事故』と『医療過誤』は別物である。『医療事故』という言葉は、2014年6月25日の医療法改正時に、「医療事故調査制度」として、はじめて法的に定義された。『医療事故』とは、「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した『医療に起因』し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、(かつ)当該管理者が当該死亡又は死産を『予期しなかった』もの」として定義されたのである。判断に際し、「過誤の有無」は問わないのである。すなわち、『医療に起因する死亡』要件と、『予期しなかった死亡』要件のみによって判断するのであり、この二つの要件が重なり合った部分が『医療事故』ということである。もっぱら医療安全の制度としての定義であり、責任追及・説明責任につながる『医療過誤』とは別物である。したがって、『医療事故』に該当するが、『医療過誤』ではない事例が存在するとともに、『医療事故』には該当しないが、『医療過誤』という事例も存在し得るのである。医療事故調査制度の『医療事故』に該当しなかったので責任なしというわけではない。別途、『医療過誤』か否かを判断する必要がある。この説明責任の部分は、厚労省が提示した「医療事故に係る調査の流れ」図のなかにも「遺族等への説明(制度の外で一般的に行う説明)」として明示してある。この説明責任に該当する部分は顧問弁護士等と協議して対応すべき部分であり、医療事故調査制度でいう遺族への説明と混同してはならない。『医療事故』と『医療過誤』の違いを認識すれば、センターへの『医療事故』発生報告に際し、裁判官の心証であるとか、遺族の感情とかの斟酌は不要であろう。『医療に起因する死亡』要件と、『予期しなかった死亡』要件のいずれにも該当する「制度の対象事案」すなわち『医療事故』は報告し、『医療事故』に該当しないものは報告の必要はないということである。ただし、『過誤』の有無は別途検討する必要があり、『過誤』の可能性のある場合は弁護士等と協議して対応すべきことは言うまでもない。会長 小田原 良治医療事故にどう対応するか
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