9【だからISO!】ISO 5665で医療事故調査制度を深化させる医療事故調によって利益や報酬といった恩恵を受けられる様々な者が、我田引水のような制度利用を自己主張し続けてきた結果が、医療事故調が今以て迷走した理由です。であるなら、トップに就く者の姿勢、調査委員の人選、調査手法、報告書の取り扱いなど、不適切事故調査委員が関われないようにする「システム」の再構築が必要です。不適切事故調査委員が関われないシステムを構築する目的で、私たち全医連は日本から提案された世界初の【消費者事故調査~要求事項とガイダンス】(ISO5665)(https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/is/20240510.html)の創設に、微力ながら貢献しました。2024年4月に発行されましたので御紹介申し上げます。「事故調査の目的が『再発防止』なら、どんな事故でも調査手法の標準化は可能である」と私たち全医連は考えました。そして、すでに事故調査制度として運用されていた運輸安全委員会や消費者事故調と交流し、あるべき医療事故調を思案しました。航空機事故や労働事故の分野には事故調査の規格やガイダンスが従来からありましたが、消費者事故調の分野には共通のガイダンスがありませんでした。そのため、同種事故の再発防止を目的とした調査が十分に行われず、事故の引き金となったヒューマン・エラーを特定しただけで調査を終了していました。このような不適切事故調査では、ヒューマン・エラーが起こる複合的な要因を特定しないため、再発防止に資する十分な提言を作れず(作らず)、消費者の被るリスクが放置されるだけでした。ISO5665は、責任追及や補償の視点を分離し、再発防止を唯一の目的とする消費者事故調査の理念や手法を確立するための国際標準の開発を、主婦連合会を中心に日本乗員組合連絡会議、全医連、消費者事故に関わった様々な有志者で練り上げました。そして、日本が提案した消費者事故調査に関するガイダンス「ISO5665:消費者事故調査~要求事項とガイダンス」が2024年4月19日に発行されました(https://www.iso.org/standard/81377.html)。経済産業省からは、同5月10日に公表されました(https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/is/20240510.html)。このISO5665では、事故から得られた教訓を基とし、「事故調査の唯一の目的は、さらなる事故の発生を防止することである。この活動の目的は、非難や責任の所在を明らかにすることではない。」と記し、そのための「要求事項」及び「推奨事項」を規定しました。そして、目次で以下の調査手法を明記しました。①適用範囲②引用規格③用語と定義④消費者事故調査の原則⑤調査対象となる事故⑥事故調査の実施⑦提言のフォローアップ附属書調査を通じた責任追及や補償の視点と分離製品、サービス、施設の利用等に関連する消費者事故調査において被害者及び被害者の家族を尊重すること。独立性・公平性・専門性を確保した事故調査チームの編成、事故現場の管理、データ収集、要因分析、再発防止策、報告書作成までの流れを規定。「事故調査チームのミッションは、隠れた危険要因を特定し、関係組織の安全性を向上させ、広く事故の再発を防止し、最終的には社会の安全性の向上に寄与することである。」を文頭で明示した。A 要因分析手法B 根本原因分析手法C 現場におけるリスクアセスメントの例
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