鹿児島県医療法人協会会報 57号
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11近な上司・同僚の影響が大きいため、前出の9つのキードライバーのうち、「職務」、「自己成長」、「健康」、「支援」、「人間関係」、「承認」の6つについて、主に各職場による取組として整理。一方「従業員エンゲージメント」は、個人の組織(会社・職場)に対する自発的な貢献意欲を指し(会社が好き)、会社方針・施策が影響するため、前出の9つのキードライバーのうち、「理念戦略」、「組織風土」、「環境」の3つについて、主に全社施策による取組と整理されています。働きがいの計測には、外部アンケートシステムを使用し、約70問のアンケート調査を年に3回実施します。外部アンケートシステムを導入したことで迅速な集計が可能となり、実施後すぐの経営層と現場のリーダー(課長職相当)への結果提示が実現し、これにより、現場で前回スコアからの変動を把握して施策を改善するサイクルを迅速かつ、こまめに回すことが可能になったとのことです。エンゲージメント向上に向けた取組として、総合スコアに影響の大きい「やりがい」を注力項目としてデータドリブン(=データを基にした意思決定や戦略策定)で施策を実行しました。なお、同社においては、「自分の成長を感じること」、「興味のある仕事をすること」、「仕事の成果を認められること」等が仕事のやりがいに影響を与える要因として把握されており、また、退職者及び異動希望者のエンゲージメント分析では、退職者については、退職に向けて「やりがい」、「成長機会」、「達成感」のスコアが大きく降下する傾向、希望部署への移動ができない社員(異動希望者)については、「やりがい」のスコアが低い状況にあり、主体的なキャリア実現機会の拡大により、退職抑止にも一定の効果が期待できるとされています。働きがい向上のために、同社が特に力を入れてきた取組が「1on1」です。毎月1回は、リーダーとその配下のメンバー間で1on1(=上司と部下が1対1で対話すること)を実施することが義務づけられ、信頼関係を築き、社員一人一人の成長と自律的なキャリア形成を支援しています。それは、データ分析の結果、上司・部下間での1on1の実施頻度が高い組織ほどエンゲージメントが高く(特に「2、3か月に1回以下」と「1か月に1回」との差が大きい)、また、短期的な業務内容に留まらず中長期的なテーマ(能力開発やキャリア)まで話せている組織ほどさらにエンゲージメントが向上する(業務アサイン(=業務の割り当て)時の説明が「成長機会」スコアに大きく影響し、特に能力向上やキャリア形成に繋がる説明を受けた人のスコアが高い)ことが明らかになったからです。職務への納得感が働きがいの向上において重要であることもわかり(認知クラフティング(=仕事の意義理解)が「やりがい」に大きく影響、自組織のミッションに関する組織トップからの発信や上司との対話が求められる)、1on1を通じて従業員に配置理由や職務の目的・意義を企業の目指す方向とあわせて説明することで、納得を得られるよう心がけているようです。取組開始後、4年間で全社のエンゲージメント総合スコアが5ポイント向上し、働きがい、自己成長やキャリア機会に関するエンゲージメント項目が向上して、特に課題だった「挑戦する風土」も大きく伸長したようです。仕事に対する社員の主体性を育て、多様な人材によるイノベーション創出を目指すのが今後の展望とのことです。今号では、「エンゲージメント」について、エンゲージメント活用の先進企業による事例等を参考に、少しだけ深掘りしてみました。医療機関におけるマネジメントにおいても、ご参考にしていただけますと幸いです。▶ 組織の未来はエンゲージメントで決まる(英治出版2018)▶ 鹿児島県医師会報令和7年4月号特集医師の働き方改革  ▶ 働き方・休み方改善ポータルサイト(ワークエンゲージメントとは)  5.おわりに6.引用・参考「エンゲージメント」について医療法人協会報 vol. 57号

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