12医療法人協会報 vol. 57号鹿児島県医療法人協会の皆様におかれましては、国民の皆様に、良質かつ適切な医療を提供するために日々ご尽力いただき、感謝申し上げます。今回は、新しい地域医療構想と、2040年に向けた看護職員の確保について、現在の状況をご報告します。我が国の総人口は2100年には、現在の半分になる見込みです。また、2040年にGDPは約1.4倍になる見通しですが、医療費はそれを上回る約1.7倍、介護費は約2.4倍になる見込みです。現在は、高齢者が急増している局面にありますが、今後は現役世代の急減に局面が遷っていくことが見込まれており、2040年には、就業者数全体が大きく減少する中で、医療・福祉関連の人材が、現在よりさらに多く必要となるところです。そして、医療提供体制における課題は、都市部と過疎地域とで異なってくる見込みであり、大都市では医療需要が増加し、過疎地域では減少する見込みです。外来患者はすでに減少局面にある医療圏が多いです。入院患者は全体的には増加傾向にありますが、地域によりばらつきがみられます。在宅患者数は、多くの地域で今後増加する見込みです。また、今後、85歳以上人口が急増することから、医療と介護の複合ニーズも高まってきますので、地域包括ケアシステムの構築・維持が非常に重要です。また、85歳以上の高齢者の救急搬送や在宅医療需要が増加する見込みです。現行の地域医療構想は、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に向けて、高齢者の医療需要が増加することが想定されていたことを踏まえ、約300の構想区域を対象として、病床の機能分化・連携を推進するための構想を策定したものです(都道府県の医療計画の一部分)。今後、急速に人口減少が進む中、高齢者数がピークとなる2040年を見据え、質の高い保健医療サービスが効率的に提供される医療現場を実現していく必要があることから、昨年度、厚生労働省において、新しい地域医療構想の検討会を開催し、関係の皆様に参画いただき、2040年に向けた改革として、新たな地域医療構想に関するとりまとめ(新たな地域医療構想の策定、医療機関機能の報告制度の創設等)を行ったところです。新たな地域医療構想は、2040年に向けて、病床の機能分化・連携といった入院医療だけでなく、外来医療・在宅医療、介護との連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体の課題解決を図る構想であり(都道府県の医療計画の上位の構想)、地域の実情に応じて、医療機関の役割分担を明確化し、医療機関の連携・再編・集約化を推進することが重要です。また、ICT機器の活用による効率化の観点や地域医療連携推進法人制度の活用等も重要です。そして、2040年に向けた医療提供体制の総合的な改革(新たな地域医療構想の実現、医師偏在対策、医療DXの推進、オンライン診療の推進、美容医療への対応等)を進めるべく、先の通常国会に医療法等の改正法案を提出したところです。残念ながら先の通常国会では成立しませんでしたが、継続審議となっており、秋の臨時国会での成立を期待しています。今後のスケジュールとしては、今年度、厚生労働省において、新たな地域医療構想に関するガイドラインを作成し、来年度に、都道府県において、新たな地域医療構想を策定いただき、再来年度から、都道府県において、新たな地域医療構想の取組を順次実施していただく予定であり、今年7月に社会保障審議会医療部会を開催し、今後、地域医療構想及び医療計画等に関する検討会の下にワーキンググループを設置し、ガイドラインの検討を進めていくことを確認しました。人材確保については、医師の確保のほか、医療従事者の中で最も人数が多い看護職員の確保も重要です。看護職員の有講演報告前・厚生労働省医政局総務課総括調整官・看護課看護職員確保対策官櫻井 公彦(はじめに)(我が国の現状と医療全体の状況)(新しい地域医療構想)(人材確保:看護職員の確保)新しい地域医療構想と看護職員の確保について
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