13医療法人協会報 vol. 57号効求人倍率は、全職種計の倍率よりも高くなっており、引き続き、看護職員の確保が必要です。また、訪問看護に従事する看護職員は増加していますが、ニーズの増大を踏まえ、訪問看護に従事する看護職員の更なる確保を推進していくことが必要です。看護職員の就業者数は、平成2年には約83.4万人でしたが、令和2年には約173.4万人に増えました。都道府県別の人口10万人当たりの看護職員の就業者数は、都市部において、全国平均よりも少ない傾向にあり、看護職員については配置基準があるため、人口10万人当たりの病床数と同じ傾向にあるところです。今は、都市部は、地方よりも高齢化率が低いので、その状態で対応できていますが、今後は都市部の高齢化が進みますので、ICT機器の活用などによるより一層の効率化や生産性向上を進める必要があります。そのため、今年度、医療機関等におけるICT機器を活用した看護業務の効率化を支援する事業(看護DX推進事業)を実施しているところです(昨年度の補正予算)。看護職員の確保については、新規養成、復職支援及び定着促進の3つを柱に対策を講じていくとともに、生涯にわたって看護職員の業務を継続できるよう、個人の資質の向上を図っていくことが必要です。新規養成については、地域医療介護総合確保基金(国が財源の3分の2、都道府県が3分の1を拠出して都道府県に設置)により、看護師等養成所の整備や運営などに対する財政支援を実施しています。看護師等学校養成所施設数は、3年課程のところが約半数で、近年、大学が増え、300を超えたところです。看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査の結果によると、定員充足率は年々減少しており、これまで、定員充足率が100%を超えていた大学においても、令和6年度に初めて定員割れし97.6%となりました。18歳人口は減少していくことから、社会人経験者も含めた意欲ある看護師等志望者を確保することが必要であり、専門職としての看護の魅力を広く国民に発信していくことが必要です。また、ニーズを把握し、それに応じたカリキュラムや支援制度等の検討を進める必要があるほか、地域でご議論いただいた結果、養成所の統廃合やサテライト化を進めたいという場合の具体的な支援策を検討していきたいと考えています。看護師の新カリキュラムについては、令和4年度から適用されており、その履修生について、今後その評価や実態調査等を進めていくこととしています。具体的には、今年度、カリキュラムの調査研究事業を行っており(昨年度の補正予算)、その結果を踏まえ、来年度から検討会を開催し、次の新たなカリキュラムの作成に取り組んでいく予定です。また、定着促進についても、地域医療介護総合確保基金により、病院内保育所の整備・運営や仮眠室・休憩スペース等の新設・拡張など、勤務環境改善に対する支援を実施しています。また、復職支援については、中央ナースセンター(日本看護協会)の下で、都道府県ナースセンター(都道府県看護協会)が、無料職業紹介や情報提供・相談対応等を通じて、復職支援等を実施しています。コロナ下の臨時雇用の紹介で得たノウハウも活かして、医療機関等にフルタイム勤務だけでなく多様な求人を出していただけるよう働きかけ、ナースセンターの紹介による就業者数を増やしていきたいと思っています。また、ナースセンターの機能強化については、今年度、へき地をはじめとした看護職員確保が困難な地域において、中央ナースセンターが都道府県ナースセンターと連携して、全国から看護職員を募集する事業や、ナースセンター及びハローワークへのICT機器整備によるオンライン面談の実施のモデル事業(岐阜県と愛媛県で実施)を実施しています(昨年度の補正予算)。また、質の高い看護職員の確保のためには、処遇改善を推進していくことが不可欠です。そのため、令和6年度診療報酬改定において、医療従事者の人材確保のためのベースアップ評価料を新たに導入し、看護職員をはじめとした医療従事者の処遇改善を行ったところです。また、昨年度補正予算にも、医療従事者の賃上げに向けた生産性向上・職場環境改善等を支援する補助金を盛り込み、今年度実施しています。現在の看護職員の需給推計は2025年までのものとなっていますので、今年の秋から、厚生労働省において、看護の需給等についての検討会を開催し、今後、2040年を見据えた新たな看護職員の需給推計を策定する予定です。また、今年度、地域医療構想策定のためのガイドラインを検討する際に、看護の供給が、各都道府県において、今後、概ねどれぐらいになっていくかなども示していき、それも踏まえ、都道府県に新たな地域医療構想を策定いただきたいと思っています。新たな地域医療構想の策定に当たっては、人口の減少等に伴い、これまでのように看護職員数が右肩上がりで増えていく時代では無くなっていくことを踏まえ、限られたマンパワーを、ICT機器を活用して効率化した上で、どう活用していくか、例えば、将来看護職員数は我が県では○万人になる見込みだから、看護職員の配置基準を踏まえると、病床数をどれぐらいにしなければならない、など、皆様に、医療機関の機能の観点からだけでなく、人材確保の観点からも、ご検討いただきたいと思っています。引き続き、関係の皆様と連携しながら、施策を進めてまいります。(新たな地域医療構想と新たな看護職員の需給推計)新しい地域医療構想と看護職員の確保について
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