鹿児島県医療法人協会会報 57号
4/16

04医療法人協会報 vol. 57号97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 2430025020015010050患患者者側側医医療療側側報報道道等等総総数数立立件件送送致致死を警察に届出するよう誘導した(「国立病院リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成指針」2000年8月)2。さらに、後に最高裁で誤判が決定した都立広尾病院届出事件の東京地裁一審判決(2001年5月)を受け、日本外科学会も医師・弁護士の古川俊治現参議院議員を委員としてガイドラインを作成して行政に歩調をあわせた3(2002年7月)。当時の論議の中で、元々は脳死臓器移植の推進目的で作成した日本法医学会の「異状死ガイドライン」(1994年5月)4が掘り起こされ、1995年版の死亡診断書記入マニュアルからは、この「異状死ガイドライン」を参考にするよう指導していた5ことも相まって、医療現場からの警察届出が急激に増加した(図1)。(図1)都立広尾病院届出事件 最高裁判決(2004年4月)は「医師法21条にいう死体の『検案』とは、医師が死者の外表検査により、死因や死因の種類を判定する業務」と判示された。医師法21条の届出対象は「異状死(death)」ではなく「異状死体(dead body)」である。戦前の旧法では「屍体(corpse) 」であった。 異状死、異常死、医療事故死、診療関連死、医療過誤死、不審死など「死」=「死亡」は検討しなくてよいという結論になる。一審東京地裁判決では、届出義務が生じたのは患者が医療過誤(看護師がヒビテンを誤注射)で「死亡」した時刻であるとした。しかし、2003年5月の控訴審東京高裁判決はこの時刻の「認定には、誤りがあり、この事実誤認は、判決に影響をおよぼすことは明らかである。」として破棄自判し、届出義務が生じた時刻は、病理解剖の外表検査で「死体」をじっくり見て異状(ヒビテン静注による右腕の色素沈着)を確認したときであるとした。最高裁判決はこの高裁判決を支持した。しかし、メディアは、外表異状については無視し「本件届出義務は、医師が、死体を検案して死因等に異状があると認めたときは、そのことを警察署に届け出るものであって、これにより、届出人と死体とのかかわり等、犯罪行為を構成する事項の供述までも強制されるものではない」と判示したことについて「診療行為に関わった医師も警察届出義務がある」旨の報道に終始した。医師も一般人も最高裁の判決文を直接読む人は極めて少なく、その意義を理解できる人もいなかったため、「検案」や「異状」については曖昧のまま「医療過誤死・診療関連死は届出義務がある」という誤った認識が広まった。また、最高裁判決に対する法律学者の論議・論評の対象は「外表異状説」ではなく、「憲法38条1項の自己負罪拒否特権に抵触するか否か」であった。つまり「行政手続上の義務を根拠に、自己が業務上過失致死等に問われる恐れがある場合でも警察届出義務があるのか否か」が考察されただけであった。 「異状死」と「異状死体」の区別もつかず、外表異状説にも気付くことのなかった医療界では、「医師法21条で診療関連死が警察沙汰になり、医師が犯罪者扱いされるなら警察の代わりに第三者機関に届出する方がましだ」という発想から「届出制度を統括するのは、犯罪の取扱いを主たる業務とする警察・検察機関ではなく、第三者から構成3.2004年最高裁判決「外表異状説」広まらず:医療界自ら中立的専門機関の創設を求める医医療療関関連連警警察察届届出出数数とと立立件件送送致致数数

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る